【三体Ⅱ黒暗森林を読む前に】おさらい 地球三体協会とは?
いよいよ三体Ⅱ黒暗森林の日本語訳版が発売されました。
新時代の超大作SFの続編ということで発売から話題沸騰中です。
その難解な内容も魅力の一つとなった三体ですが、2巻を読む前に少し内容のおさらいをしましょう。
1巻を読了前の方はまずはネタバレなしのあらすじから初めてみてください。
以下、1巻のネタバレを含みます。
本記事では三体の物語の中核を成す団体「地球三体協会」について解説します。
団体の構成や理念、活動目的をしっかりおさらいして2巻に備えましょう。
地球三体協会とは?
地球三体協会(Earth-Trisolaris Organization : ETO)は葉文潔が代表を務める団体であり、非常に急進的な思想を持つ組織である。
その理想は「三体文明に人類文明を矯正してもらう こと」と述べられている。
一頃流行した終末待望論や最近よく聞く反出生主義を合わせて人類への憎しみをプラスしたような過激な理念を持っている。
※反出生主義の主張に関してはこちらの特集を
近年、話題の主張について様々な人の視点から述べられています
そんな過激思想の地球三体協会だが、一枚岩ではなく2つの大きな派閥が激しく対立している。
三体世界に対する態度から"降臨派" と "救済派"と呼ばれる派閥について解説する。
降臨派とは?
降臨派は設立時の地球三体協会の思想を受け継いだ原理主義的な派閥であり、人類に対して深い絶望を持っている。
その絶望の原因となる部分は色々な面があるが、作中ではマイク・エヴァンズが環境問題をきっかけに人類へ失望する描写がある。
その下地となっている名著「沈黙の春」はぜひあらすじだけでも追ってみていただきたい。
とにかく人類は自分自身で自浄することができないところまで来ていると考え、他者(=三体文明)による人類の滅亡を望んでいる。
そのヤバすぎる理念は隠された綱領とされる以下の言葉に濃縮されている。
「人類は邪悪な種である。人類文明は地球に対して許しがたい罪を犯してきた。降臨派 の最終目標は、主によって罰を与えてもらうこと、すなわち全人類の滅亡 で ある」
救済派との大きな相違点の一つに三体文明に対する気持ちの差がある。
三体文明を"主"と呼ぶ救済派に対して、降臨派は三体文明に対して大きな期待や羨望のような感情は持ち合わせていない。
あくまで、人類への憎しみが行動原理であり三体は方法でしかない、というようなある意味ドライな考えを持っている。
救済派とは?
救済派は降臨派よりかなり遅れてでてきた派閥であり、降臨派に比べると比較的柔軟な理念を持つ。
三体文明を主と呼び、宗教組織の体を成している。
滅亡の危機に瀕する主の救済を行動理念とし、そのために人類が犠牲になることは厭わないが、積極的に人類の滅亡を望むような意思はない。
物語の第3の舞台となるVRゲーム三体を作ったのも救済派であり、汪淼のようにゲームにドはまりした知識人への布教に大成功している。
ゲームのシナリオのように数学や物理、天文学的なアプローチから主の救済を希求している。
「人類に対する憎悪を持つ降臨派」と「三体文明の救済を望む救済派」
行動原理が地球と三体のどちら側にあるか、という対比が分かりやすい。
生存派とは?
いたるところに三すくみ、3つ巴の構造を取りたい事情もあってか(?)、第3の派閥が勢力を伸ばしてきている。
降臨派や救済派に対して、来るべき三体文明の襲来後の人類の生存を目指そうという派閥。
あまりに普通の考えなのでそんな派閥の必要性はよく分からないが、読者に近い目線を持った人達だ。
2巻以降ではこういった考えの人を中心に物語が展開するだろう。
地球三体協会の瓦解
降臨派・救済派の派閥間の激しい争いもあり、両派閥はリーダーを失い、最終的には三体協会自体が存続の危機を迎える。
降臨派
- マイク・エヴァンス : パナマ運河で繰り広げられた古筝作戦で死亡
- 潘寒 : 申玉菲の殺害を咎められ、救済派により殺害
救済派
- 葉文潔 : 史強らによって拘束
-
申玉菲 : 降臨派によって殺害
内部分裂を起こしたり、中国の警察に代表を捕らえられたりと人類の滅亡を企む悪の組織にしてはお粗末さも目立つ三体協会だが、その恐ろしい理念が消えたわけではない。
現実に反出生主義を唱える人が多い世の中だが、降臨派が主張するような人類の暗部に対して、作者はどのような答えを提示してくれるのだろうか。
2巻以降での注目ポイントになる。