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【ネタバレなし】歴代最高評価の中国発SF小説 三体のあらすじと魅力

あのバラク・オバマも絶賛した大ヒット中国SF小説が遂に日本に上陸。

本格派SFであることは疑う余地もないが、古典にはない現代SFならではの要素が詰め込まれた作品になっている。

超名作SF「星を継ぐもの」と比較して史上最高SFとの評価もあるが、その魅力はどこにあるのか?

"ネタバレなし"で大ヒットの理由に迫る。

 

 

 

 

三体のあらすじ

物理学者の父を文化大革命で惨殺され、人類に絶望した中国人エリート科学者・葉文潔(イエ・ウェンジエ)。失意の日々を過ごす彼女は、ある日、巨大パラボラアンテナを備える謎めいた軍事基地にスカウトされる。そこでは、人類の運命を左右するかもしれないプロジェクトが、極秘裏に進行していた。数十年後。ナノテク素材の研究者・汪森(ワン・ミャオ)は、ある会議に招集され、世界的な科学者が次々に自殺している事実を告げられる。その陰に見え隠れする学術団体“科学フロンティア”への潜入を引き受けた彼を、科学的にありえない怪現象“ゴースト・カウントダウン”が襲う。そして汪森が入り込む、三つの太陽を持つ異星を舞台にしたVRゲーム『三体』の驚くべき真実とは?本書に始まる“三体”三部作は、本国版が合計2100万部、英訳版が100万部以上の売上を記録。翻訳書として、またアジア圏の作品として初のヒューゴー賞長篇部門に輝いた、現代中国最大のヒット作。 

BOOKデータベースより

物語の構造

三体は物語の構造から難解との声が多いが、一度俯瞰してしまえば複雑すぎるということは決してない。

冒頭のあらすじではその内容をこれ以上ないほど削ぎ取って簡潔に説明してくれている。

それではあらすじを引用しながらネタバレなしで簡単に物語の構造を見てみよう。

2人の視点と3つの舞台から語られる物語

作中では2人の主人公、葉文潔(イエ・ウェンジエ)と汪森(ワン・ミャオ)が登場する。

物理学者の父を文化大革命で惨殺され、人類に絶望した中国人エリート科学者・葉文潔(イエ・ウェンジエ)。

一つ目の舞台は過去編。

1966年から10年続いた文化大革命を舞台とする葉文潔目線の物語である。

文化大革命は"文革" と略されることも多い、中国で実際に行われた改革運動である。

教育者や研究者も迫害の対象となっており、物理学者の父の死が葉文潔の今後の行動の下地となっていく。

 

数十年後。ナノテク素材の研究者・汪森(ワン・ミャオ)は、ある会議に招集され、世界的な科学者が次々に自殺している事実を告げられる。

二つ目の舞台はもう一人の主人公、汪森が活躍する現代編である。

科学者の自殺や謎の学術団体、汪森を襲う怪奇現象などの一見サスペンス小説と思うようなエピソードから物語が展開されていく。

 

三つの太陽を持つ異星を舞台にしたVRゲーム『三体』の驚くべき真実とは?

三つ目の舞台は汪森がプレイするVRゲーム三体の世界

古典SFではあり得ない思い切った設定もこの小説の魅力。

下手をするとエンタメ性を追求し過ぎて陳腐になりそうな設定を活かしきって、重厚な物語の一部へと昇華されている。

 

 

三体の魅力

科学に対する深い追及

冒頭のあらすじを再度見返すと分かるのだが、なんとあらすじに出てくる人物は全員科学者なのである。

しかも物語に出てくる科学分野は多岐にわたり、数学、計算科学、コンピュータ、ナノマテリアル、加速器物理、素粒子物理、天文学…

様々な分野に言及しつつ、一つの物語としてまとめ上げられており、本書の比較対象として、名作SF小説筆頭の「星を継ぐもの」が挙げられる理由の一つであろう。

 

特に基礎科学の意義についての言及は他作品と一線を画するところがある。

決して一般人の生活にすぐに貢献することはない基礎科学の意義は?

様々な意見があると思うが、この件に対する筆者の主張は一読の価値がある。

エネルギッシュな人物描写

登場人物に科学者が多いが、彼らは全くおとなしくはなく、彼らの内から出てくる生命力のようなエネルギッシュさは半端ではない。

2人の主人公とサブ主人公の史強(シー・チアン)がグイグイと話をドライブしていってくれる展開は読んでいて気持ちがいい。

こういった魅力的な人物描写によって、科学を根底においたストーリーでも無味乾燥になることなく、エンタメ性に富んだ内容になっている。

SF初心者にも自信を持って勧められる理由の一つだ。

多彩な要素を盛り込んだ重厚なストーリー

 基礎科学とサスペンス小説のような謎を散りばめた展開、史実から書かれる文化大革命の爪痕、現代小説らしいゲーム世界の展開。

面白いもの、書きたいものを全部盛り込んだような欲張り小説となっている。

それぞれの要素が読者を惹きつける力を持っており、しかもそれらが有機的に絡みあっていくのだから面白くないわけがない。

この大胆でダイナミックなストーリー展開とそれを強引にでもまとめ上げてしまう筆者の腕力に圧倒されてしまう。

なんといってもこの重厚なストーリーが本作最大の魅力だろう。

まとめ

大ヒットSF小説三体のあらすじと魅力について紹介した。

難解なところもあるが、話の構造さえ分かってしまえば、科学論証や歴史的描写の細かいところは理解できなくても大方問題ない。

それよりも筆者の描く力強いストーリーにどっぶり入り込んで、思う存分楽しんでほしい。

 

 

1巻の物語の中心になる地球三体協会については以下記事で解説しています。

※ネタバレを含む

www.vocsan.info